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第15回臨床解剖研究会は,平成23年9月2日午後から3日の夕方まで当番世話人光嶋勲教授(東京大学形成外科)により,緑濃い東京大学農学部の弥生講堂にて開催された.当日は台風12号の接近で荒れた天候が予想され出席者に影響が出るのではないかと心配されたが,幸い関東地方への台風接近は免れたものの残暑の厳しい二日間であった.例年通り各地からご参加いただいたが,今世界中で注目されている「血管柄付遊離穿通枝皮弁を用いた低侵襲再建法の進歩」と題したシンポジウムが初日午後に組まれ,当番世話人が意図された通り形成外科領域の参加者の関心を集めた.二日目には「神経・血管・リンパ管解剖の臨床応用」,「リンパ浮腫に対する基礎研究および診断・治療法の進歩」の2題のシンポジウムが各専門分野から学際的に行われ,その他一般演題も充実した内容で,質疑応答がしばしば白熱して時間オーバーとなる場面もあった.上記シンポジウムのほかランチョンセミナー2題,一般演題15題,会長の特別講演など多彩なプログラムであった.
研究会終了後はモダンな木造建築のアネックスで懇親会が行われ,残暑で乾いた咽をビールやワインで癒したのは勿論,和やかな雰囲気の中で情報交換,ディスカッションの輪が広がった.詳細は学会報告記を執筆いただいたのでご参照ください.
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・第15回世話人会は研究会初日の9月2日(金)に東京大学工学部内の日比谷松本楼にて13名の世話人が出席して開催された.会員数は本年4月現在施設会員96,個人会員103,賛助会員2で,個人会員が少数増加傾向にある.
・新規世話人に太田哲生氏(金沢大学大学院がん局所制御学教授),中野隆氏(愛知医科大学解剖学教授)が推薦され承認された.
・本年度は役員改選の年にあたり,佐藤達夫会長,寺本龍生・三輪晃一・大谷修・竜崇正・光嶋勲・遠藤格の各幹事,島田和幸・衣袋健司監事の継続が提案され承認された.また秋田恵一世話人が新幹事に推薦され承認された.
・名誉会員を設けることが承認された.
・次期第16回当番世話人に前田耕太郎世話人(藤田保健衛生大学消化器外科教授)が推薦され承認された.開催日は2012年9月8日(土),会場は名古屋市の予定.次々期第17回当番世話人は島田和幸世話人(鹿児島大学人体構造解剖学教授)が推薦され承認された.
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事務局長 内田源太郎(東京大学形成外科)
長月を迎えたとはいえまだまだ暑さの残る2011年9月2日(金),3日(土)の両日にわたり,東京大学弥生講堂(一条ホール/アネックス)において,第15回臨床解剖研究会を開催させていただきました.幸い天候にも何とか恵まれ,総参加者数は130余名を数えることとなりました.ご来場いただいた先生方におかれましては,ここに誌面をお借りして御礼申し上げます.本当にありがとうございました.
会場の東京大学弥生講堂は,東京大学農学部の設立125周年記念事業にあたり,2000年に一条工務店が建築・寄贈した省エネルギー・環境調和型の木造建築で,学会をはじめとしたさまざまなコンベンションに使われております.梁,構造材をはじめとした木々の香りが,日常の教育・診療業務に忙しい諸先生方が一息つけるきっかけとなってくれていれば当方としてはこの上もなく嬉しく思います.
プログラム構成段階では,異分野の専門家同士の討論が多く行われ盛り上がるように,シンポジウムのセッションを多く組んだのですが,時間配分に配慮が足らずに消化不良となった感がありました.大変申し訳ありませんでした.
一方昨今,形成外科単科の学会ですと,政治的な理由で議論がとげとげしくなり,耳を塞ぎたくなるような場面も時折あり,全くお恥ずかしい限りなのですが,今回の研究会においては,お互いを尊重しあいながら討論が進められ,主催者側としても安心してみていられる,良い議論の場となったのではないかと思っております.
最後になりましたが,本研究会幹事,世話人の先生方をはじめ,形成外科その他の関連各分野の先生方,御支援いただいた医療機器および製薬会社の皆様方,本当にありがとうございました.
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臨床解剖学徒北伊に集う
| 本年は我が国の臨床解剖学の発展の節目と記憶される予感がする.隔年開催の欧州臨床解剖学会が北イタリアのパドヴァで開催され,日本からもこれまでにない多くの研究者が参加した.かのヴェサリウス,コロンボ,ファロッピオ,ファブリチオという解剖学黄金のカルテット,そしてハーヴェイ,コペルニクスさえそこに学んだ近代解剖学・医学・科学の揺籃の地であることを考えるならば,不思議とするに当たらない.学術ならびに同学の友との国際交流もさることながら,最大の収穫は,本邦からの参加者の専門領域が解剖・外科・肛門科・放射線科・婦人科・形成外科・耳鼻科・歯科と多岐にわたっており,国内ではなかなか一堂に集う機会に恵まれなかった仲間が,懇親会で臨床解剖学の将来について夢を語り合えたことではあるまいか.ここでは,解剖・外科・婦人科からお一人ずつを煩わして印象記を執筆していただいたので,ぜひお目通しいただきたい.数年のうちに国際シンポジウムを開催し,日本の優れた業績と活動を知ってもらう機会を作りたいものである.しかし日本から欧米は近く,欧米から日本は遠い.まずは一衣帯水の韓国・中国との交流を深めることを先行させるのが得策であろう(佐藤達夫).
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| 第11回 EACAに出席するためにパドヴァを訪れて |
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大谷 修(富山大学大学院医学薬学研究部解剖学教授)
フランクフルト,ヴェネツィア経由でパドヴァへ
第11回ヨーロッパ臨床解剖学会に出席するために2011年6月27日全日空で成田を発ち,フランクフルト,ヴェネツィア経由で北イタリアの小さな町パドヴァを訪れた.プラザホテルに着いたのは28日午後2時頃だったろうか.さっそく,初日の学会場の下見に出かけた.市庁舎の対面にある立派な門のボ・パレスと呼ばれるパドヴァ大学が初日の会場だ.その近くに船腹を逆さにしたような形の屋根の2階建てのラジョーネ宮があり,その南にフルッタ広場があった.
29日の午前中は,スクロベーニ礼拝堂や市立博物館を訪れ,二日目と三日目の学術集会が開かれる解剖学教室の下見に出かけた.帰り道,ボ・パレスの近くで,カフェ・ペドロッキに立ち寄った.このカフェは夜,パドヴァ大学の学生や教員の溜まり場となるそうだ.パドヴァ大学は,そのモットー"Universa
Universis Patavina Libertas"(パドヴァの自由は普遍で万人のため)が示すように,自由を愛し、オーストリアによる占領やナチの占領に対しても抵抗拠点になったといわれている.
開会式とレセプション
29日の午後,レジストレーションと開会式に出席のため,再びボ・パレスに行った.中庭を通り過ぎ,階段を上って入った部屋にはガリレオ・ガリレイが講義に使ったという机が飾られていた.さらに奥のAula
Magna(主集会場)が開会式場だ.予定よりもずいぶん遅れて開会式は始まった.会頭のデ・カルロ教授の演説に始まり,延々と居眠りを誘う演説が続き,最後は「睡眠関連呼吸障害」という学術講演だった.短いコンサートを聴いた後,中庭に出て集団写真を撮った.午後8時をかなり過ぎたころにやっとレセプションが始まった.
学術集会
30日の朝,タクシーでパドヴァ大学の解剖学教室に行き,ポスターを展示した.我々のポスター「高度にホルムアルデヒドに過敏な学生のための解剖実習室」は結構,注目され,写真を撮る人や質問する人もかなりいた.午後には「リンパ管とリンパ節の解剖とリンパ浮腫」という題で口演した.最前列で聞いていたエイブラハム教授が「弁を観察したか」と質問してくれた。彼は、「すばらしい」と誉めてくれた.ほかにも「胸管は蠕動運動するのか」という質問があった.その日のセッションが終わり、帰ろうとしていたところ、最前列で私の口演を聞いていた学生風の女性がニッコリして「また、明日ね」と言って立ち去ったのは印象的だった.夜はラジョーネ宮でコンサートとガラディナーだった.デ・カルロ教授から学会を記念するメダルを頂いた.さすが"マンジャーレ,カンターレ,アモーレ"の国イタリア,懇親会は充実していた.
7月1日朝は,学会が企画した世界一古い解剖示説室のツアーに参加した.この劇場風の解剖示説室は,ボ・パレスの一角にあり,中央の底にある解剖台を6階からなる楕円形の観覧席が取り囲み,300人以上を収容できるという.一見の価値ある歴史的建造物であった.ツアーの後,解剖学教室に行って,学術講演を聴いた.日本人の発表は概して高レベルであったが、全体的には研究発表は玉石混合で学会のレベルはさほど高くなく,学術集会としての企画はお粗末であった.伝統に依存するばかりでなく、新時代を切り開くようなシンポジウムなどもっと工夫した企画がほしかった。また、それほど大きくない学会では一会場で学術集会を行った方が多くの口演を聞くことができてよいと感じた。夜は,コフラー・レストランで典型的なイタリア料理のガラディナーに出席した.ビールとイタリア料理を楽しみながら世界各国の研究者と交流を深めることができた.
おわりに
7月2日パドヴァを発ち,ヴェネツィア・マルコポーロ空港から,全日空でフランクフルトを経由して翌3日無事帰国した.往路,復路ともにトラブルもなく,快適な旅行であった.嘗てヴェザリウス,ファロッピオ,ファブリシウス,バルトリン,ハーベイ,モルガニ等々の著名な解剖学者を輩出した歴史と伝統のあるパドヴァ大学を訪れ,各国の解剖学者と解剖学教育や臨床解剖学的研究や献体に関して意見を交換し,交流を深めることができたことは大変有意義であった.
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| 第11回ヨーロッパ臨床解剖学会(European Association of Clinical Anatomy) 参加印象記 |
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竜 崇正(浦安ふじみクリニック・千葉県がんセンター)
2011年6月29日から7月1日まで,イタリア北部の古都パドヴァで第11回ヨーロッパ臨床解剖学会(EACA)が開催された.今回はイギリス臨床解剖学会(BACA)のサマーミーテイングとのジョイント開催である.会長はパドヴァ大学のRaffaele
De Caro教授である.
パドバヴァ大学は,当時地中海を支配していた強国であったベネチア共和国の大学として1222年に創設された,ヨーロッパで最も古い大学のひとつである.コペルニクスが学び,ガリレオやダンテが講義をしたことでも分かる様に,医学や自然科学の分野ではヨーロッパ随一の名声を獲得していた大学である.特にパドヴァ大学は解剖学の歴史と共に歩んだ大学であり,Andreas
Vesaliusを輩出し,1594年に世界最古の解剖室Permanent Anatomical Theaterが作られ,現存していることでも有名である.
6月29日朝9時半からパドヴァ大学の解剖学教室において,Pre-Conference Workshopが開かれた.階段教室となっている会場には,ヨーロッパのみならず世界から多くの臨床解剖の研究者が集まっていた.午後3時からのOpening
Ceremonyは場所を変え,Anatomical Theaterに近接している,やはり中世からの宮殿であるBo
Placeで行われた.旧市街の中心にあるこの場所は,市場があり最も活気のある商業地域でもある,
翌30日から7月1日までパドヴァ大学の解剖学教室において,ヨーロッパ臨床解剖学会が開催された.ヨーロッパのみならず,アメリカ,アフリカ,中近東,アジアなど世界の34ヵ国から多くの研究者が参加し,口演144題,ポスター155題が発表された.Education,Imaging,
Neuro-anatomy, Head, Neck, Abdomen, Upper Limb, Lower
Limb, Pelvis, Thorax, EmbriologyなどのSessionに分かれて発表され,白熱した討論が展開された.EACAとBACAのジョイントだけあって,イギリスから55題,イタリアから35題と多かったが,フランス,スペイン,ポルトガル,オーストリー,ギリシャなどが7から10題前後発表されたが,トルコから26題,ルーマニアから19題など,が目を引いた.危険な国と目されている?イランから9題,遠くのニュージーランドから9題発表されていたのには驚いた.臨床解剖研究は世界では日本よりも普遍化していることを実感した.日本の臨床解剖研究会からは,佐藤達夫会長以下,富山大学の大谷教授,東京医科歯科大学の秋田教授一門,三井記念病院の衣袋部長など,21の演題が発表された.また今年初めて臨床解剖研究会が組織された韓国からは,日本を上回る26の演題が発表された.その他アジアからは中国とインドから各5題,タイ,マレーシアから各2題の発表があった.日本の演題はやはり群を抜いてレベルが高く,系統解剖学においても画像解剖においても世界のトップクラスにあることを再認識した.今後,韓国や中国などとも協力して,ぜひ佐藤会長に国際的な臨床解剖研究会を日本で開催して欲しいと改めて痛感した.
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加藤友康(国立がん研究センター中央病院婦人腫瘍科)
今年の第11回欧州臨床解剖学会(European Association of Clinical Anatomy)は2011年6月29日から7月1日までイタリアのパドヴァ大学を会場として行われた.本会は英国臨床解剖学会(British
Association of Clinical Anatomists)とのジョイントミーティング(Summer
Scientific Meeting 2011)として開催された.
パドヴァはヴェネツィアから近くヴェネト州の中心に位置する.パドヴァ大学はボローニャ大学に次ぐイタリアで2番目に古い大学で,天文学と解剖学が有名である.6月29日のregistration会場となった大学本館(Il
Bo)の一室にはガリレイが立っていた教壇と階段の一部が胸像とともに保存されている.Opening ceremonyが開かれたAula
Magna 'Galielo Galilei' の壁面には業績を残した偉人の肖像画が一面に掲げられていた.Welcome
receptionの部屋では卒業生であるコペルニクスの胸像を見つけた.
臨床解剖学を志すものにとってパドヴァ大学はヴェサリウスの本拠地であり,ここを訪れることはまさに聖地巡礼である.ヴェサリウスは自ら解剖を行い,学生らにその所見をその場で解説した.この手法により古典解剖学の誤りは正され,1543年に大著「ファブリカ」が世に出版された.教授自らが剖出して解説する方法はファロッピオ,ファブリチオに継承された.ファブリチオは私財を投じて1594年に世界最古の解剖教室
(teatro anatomico) を作った.階段状に層をなす楕円形のコロセウム型で,最下層の教師が解剖するのを医学生たちが何層にも取り巻き周りから見学するための部屋である.学会主催の見学ツアーに参加すると,ヴェサリウスをはじめとする多くの偉人の肖像画が一面に並べられていた待合室にまず通される.順番に従い解剖教室に入ると,そこは解剖台が置かれていた最下層であった.そこに立って見上げると楕円形の見学台が目に入る.思ったよりも狭い空間で,現在の整えられた解剖学教室環境と比して照明や異臭対策はどうしていたのかと思いをめぐらした.
翌6月30日からは会場をファロッピオ通りのAnatomical Institutesに移し会議が始まった.口演会場は2つの階段教室,ポスターは廊下にスタンドを立てて掲示というように,とてもコンパクトに収められていた.階段教室の天井は非常に高く,階段は急で,机と椅子の幅が狭く,体を横に向けないと安定した座りが得られない.そのような歴史ある会場でプラズマディスプレーを左右に設置するなどの工夫がみられた.総演題数は299題で,うち口演が144題,ポスターが155題であった.日本からは会長の佐藤達夫先生,幹事の大谷修先生,竜崇正先生を始め,21演題が発表された(口演13題,ポスター8題).特に東京医科歯科大学臨床解剖学教室からは秋田教授を中心に口演7題,ポスター4題が発表された.
7月1日には奇しくも医学部時代の同級生(東京医科歯科大学医31回生)3人が口演発表するという機会を得た.学生時代にはさほど解剖学に熱心ではなかったが,卒後日頃の臨床診療で疑問に思ったことを,剖出で検証したいというのが動機となり研究を始めたのが10年前である.ヴェサリウスの足元には遙かに及ばないが,志だけは医歯大臨床解剖学教室のスタッフの皆様にご理解をいただき,学生さんとの共同研究を通して,発表にこぎ着けることができた.自らの経験から若手の先生方には手術のときに解剖に少しでも疑問をもったなら,ぜひ剖検で検証する機会を求めるよう切に要望したい.剖出の機会を得ることは難しいが,手立てを講じて乗り越えるだけの情熱をもって進んでいただきたい.同じ境地に至った者たちで集うGala
dinnerのひとときを趣深く過ごすことができるでしょう.是非臨床解剖学の扉をたたいて頂きたい.
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| AACA(American Association of Clinical Anatomists)
年次総会に出席して |
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佐藤達夫(臨床解剖研究会会長・東京有明医療大学学長)
AACA(American Association of Clinical Anatomists)の第28回年次総会は2011年7月12〜16日にオハイオ州の州都コランバス市で開催された.シカゴからの乗換機は右2列,左1列と超小型で,左側の頭上には収納棚がなく,少し大きな持ち込み荷物は格納庫に預けざるを得ないしまつ.またわずか400kmの距離とはいえ,シカゴとの間にタイムゾーンの境が走っており,タイムテーブル上では20分で着陸であり,逆に米大陸の広さを実感した次第である.360度見渡す限り平地のなかのなんの変哲もない中都市で,なぜに全国規模の学会がといぶかしんだが,中心部にコンヴェンション・ホールがあり,ハイアット・リージェンシー・ホテルと屋根付き渡り廊下で結ばれているのをみて納得した.実際AACAのほかに大きな全国集会が開催されていて,多数の参加者のなかにはobeseとしか形容できぬ若い女性が沢山いるのに驚き,またその食欲を横目にながめて,肥満が国家的問題であることに納得することになった.昨年のハワイ,2008年のラスヴェガスと観光地開催が続いた後の穏やかな町の学会とあって,家族同伴は少なく,かえって学術交流には適した学会であったと思う.
一般演題110題のうち77題はポスターで,口演33題は3日間午前中に1会場で行われ,各題討議込15分の割り当ては,余裕があってよいプログラムだったと思う.日本からの参加者は私と東京医科歯科大学歯学部の坂本裕次郎氏の二人にすぎず,例年にくらべて少なかった.それは,1年おきのヨーロッパ臨床解剖学会EACAがわずか半月前に開催されたばかりの影響であろう.開催地パドヴァは,1543年に人体構造論(ファブリカ)を出版したヴェサリウスが当時教鞭をとっていた所,いわば人体解剖学の聖地であって,日本からも20人以上が参加していた.そして米国からもClinical
Anatomy のCarmichael編集長,Dalley名誉会員,英国のAbrahams(AACA名誉会員)も巡礼者よろしく参加しており,この三人とはコランバスで再会して,ひと月の間に二度もお会いしましたねと挨拶しながらパドヴァの印象について話しあった.やはり米英の解剖学者にとってもパドヴァは聖地なのだなとあらためて感じた次第である.EACAとパドヴァの印象については大谷・竜・加藤三氏の寄稿を参照していただきたい.
わが国からの参加者が二人とは,演題も二題にすぎないことを意味する.坂本氏は舌骨舌筋と舌骨上部諸筋との立体的位置関係についてポスターで発表され,その精細な解剖所見は舌の運動の解析にとって重要な研究として注目を浴びた.小生は左反回神経と左気管傍リンパ節群との位置関係について剖出映像をもとに示説したが,口演後,外科医にして解剖学教員の一人から日本の外科医はどうしてあのように精細で徹底した完璧な手術ができるのかという質問を受けた.一瞬戸惑ったが,一般に患者は痩せており,忍耐強く(3.11の映像から理解できたらしい),外科医への信頼度も高い,外科医も腕がよいし,臨床解剖を精細に学習して手術にのぞんでおり,さらに解剖学者の熱心な支援を背に受けて奮闘している,と答えたが,いかがであろうか.
一時は教育方法が幅を利かせたAACAの学術集会であるが,若手の台頭もあって次第に研究の深化にシフトしてきており,本年も地に足のついた着実な集会との印象を強くした.次回は,2012年7月9日〜12日にカリブ海はグレナダで開催される.ローカル・オーガナイザーのMarios
Loukas(St. Geoge's University, Grenada)はアクティヴな若手研究者として,いまやAACAの旗手に成長した.彼ならば,観光に時間を割くことを忘れさせる魅力あるプログラムを計画してくれるであろう.パドヴァ以上に我が国からの参加者があるように期待したい.
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第13号(2010年11月10日発行)

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