2009年の第26回アメリカ臨床解剖学会がオハイオ州のクリーブランドで開催された(2009年7月14〜17日).その学会会場は,クリーブランド市内の
Cleveland Clinic に隣接する InterContinental Hotelであり,口演会場とポスター会場の2会場をメイン会場に開かれました.講演会場は,大変豪華な会場で,席ごとに備え付けのマイクがあり,素晴らしい会場でありました.参加者は北米以外にヨーロッパやアジアからの参加者もあり,日本からは,私たち久留米大学からの2名の他,毎年参加されている東京医科歯科大学名誉教授佐藤達夫先生と同大学の坂本裕次郎先生が参加されていました.
私は解剖学教育,特にアメリカやヨーロッパにおける解剖学教育がどのようになっているのか興味があり,2003年のグラーツ(EACA),2005年ニューヨーク,2007年ラスベガス,2008年トロントの学会に参加し,毎回1〜2題のポスター発表とともに口演やポスター発表で勉強させて頂いています.毎年7月のこの時期の学会は前週までで学内での解剖学実習がすべて終了していて,実習に重ならないために教室の先生達と出席しています.今回は「A
case of a middle mesenteric artery」という演題で発表しましたが,これは2007年の久留米大学医学部学生解剖学実習で遭遇した中腸間膜動脈の珍しい一例を発表したものです.数名の先生方に質問や貴重なアドバイスを頂き,今後の実習で遭遇する血管破格に参考にさせて頂きたいと思います.
佐藤先生は,「DVD demonstration of topographic anatomy of
axillary lymph nodes for breast cancer surgery」というタイトルで今年もDVDを使われた口演でした.乳腺外科では重要な腋窩部分のリンパを順序良く解説を加えられながらのすばらしい剖出所見であり,会場からは拍手喝采の口演でした.その午後には,佐藤先生の呼びかけで今回日本から参加した4名でダウンタウンに出かけて昼食をとりながら,解剖学会の話や久留米大学の話や前身の解剖学第一講座の名誉教授である竹重順夫先生の篤志解剖の全連の会長時代の話などを3〜4時間ほど,佐藤先生と初めてお話しすることができて大変嬉しく思いました.
クリーブランドの印象は,以前は人口も多く全米でも有数の都市であったようですが,最近は不況のせいか人口も減り,ダウンタウンの町並みにも店を閉鎖しているところが数多く見られました.そんな中で学会が行われたCleveland
Clinic は,広大な敷地にいくつもの建物があり,その敷地内にInterContinental Hotelは2つ存在し,患者やその家族などのためのホテルをSuitesとよび,我々の宿泊や学会場のホテルとは別の場所にありました.Cleveland
Clinicには多くの臨床研究者が世界中から留学しているとのことで,久留米大学医学部の循環器外科の先生と会う機会をもち,夕食やメジャーリーグ観戦ができたことがいい思い出になりました.
近年,我が国ばかりでなく欧米でも医学教育における解剖学教育の位置づけや実習(肉眼解剖学実習や組織学)の在り方など問題になっています.とくに,我が国においては実習にかかわるスタッフ不足は慢性的な問題であるようです.私が久留米大学の解剖学教授に就任して直ぐに2講座が1講座になり,名称を肉眼・臨床解剖部門と名付けました.これはまさに解剖学実習を中心とした研究および教育を行う部門であることを学内だけでなく,学外にアピールしたものです.幸い私の教室では私以外に今回発表した嵯峨堅准教授の他,3名の助教と2名の大学院生で行っています.これらのスタッフで毎年,日本解剖学会総会と九州支部会,そしてこのAACAで発表することを目標に実習や研究を行っています.また,昨年末から私と嵯峨准教授は佐藤達夫先生と大分大学の三浦真弘先生のお二人にAACAにご推薦を頂き,本年6月に正式にAACAの会員になることができました.両先生には大変ありがたく存じています.来年はハワイでの開催ということなので日本の臨床解剖研究会の多くの方が出席され,多くの演題が出されることを願っています.また,佐藤先生には今回このような報告記を書く機会を頂きましたことを厚く感謝申し上げます.